法律上、一部の契約(保証契約等)を除き、契約は口頭でも有効です。したがって、契約書に契約当事者の押印が押されているか否かにかかわらず、なされた契約は有効です。
では、なぜ多くの契約書において押印することが求められているのでしょうか。
前述のとおり、契約は口頭でも有効なのですが、後々のトラブルを避けるため、契約書は作成されるのです。押印についても、後々のトラブルを避けるため求められることが多いのです。
例えば、一方当事者が「そのような契約はしていない、第三者が成りすまして契約した」などと言い逃れをした場合で考えてみましょう。もし契約書に、当事者のみが所持している印鑑(実印など)が押してあれば、第三者が当該印鑑を使用して押印することは、ほぼ不可能なので、契約書に押印したのは、当該契約当事者であり、当該契約書の内容を認識していた(=契約は有効)、ということができるのです。
もちろん、第三者が印鑑を盗み出し、当事者に成りすまして契約することが絶対にないとは言えないので、実印が押してあるから必ず実印の持ち主が契約した、ということにはなりません。しかし、契約書に実印などが押されていれば、後々、上述のようなトラブルが生じることをかなりの程度、減らすことができるのです。